
今いる学校の校歌には、山の名がたくさん登場するのでけっこう気に入っている。あの芥川也寸志の作詞ということで、ずっとこの町で歌い継がれてきているようである。「大切な校歌なので間違えずに歌ってください」と子どもたちから言われてしまうくらいだった。各番のはじめに山が出てくる。「乗鞍の輝く峰を朝夕に仰ぎ親しみ」、「奥深き穂高の山の雪解けて流る梓」、そして「鉢盛の裾野豊かに」と。年度末の各種行事で3年ぶり?に歌われるようになって、しっかり頭にメロディーが残ってしまった。
さて、登場する山々であるが、乗鞍岳へは先月朝日岳までだが、スキーで登ることができた。穂高岳はどうか。奥穂高の頂を踏んだのは、学生時代に一度だけだが、こっちへ来てからも西穂独標や涸沢へは行った。それに上高地からは季節を変えて何度も眺めているのでよし。残すは鉢盛山だけとなっていた。
この鉢盛山、乗鞍や穂高と比べると圧倒的に知名度は下がるのではあるが、名山であることに変わりはない。松本市内から眺めることができるが、そのなだらかな山容と豊かな裾野は、名の通り鉢に盛りつけをしたような形をしている。同じように鉢を伏せたような鉢伏山(よく間違えやすい)や、鍋を被せた鍋冠山もなだらかな山容から名付けられた山である。穏やかな山容は、奥山と比べて親しみやすく、広い裾野がそのまま西の里の人々の生活圏になっている。山を覆う針葉樹の鬱蒼とした林も魅力的である。
そして私にとってこの山が、木曾川源流の山であるという点で、よりいっそうの思い入れがあるのである。
木曾川は鉢盛山南斜面のワサビ沢を源頭とし、はるか伊勢湾へ注ぐ229キロの大河川である。この山に降った雨水が、やがて深い谷を作り、多くの支川を集め、大河となって濃尾平野を潤す。。ふるさとへ繋がる水系の本流のスタートの山へは、流るる水を意識する者にとって何にも代えがたい存在なのである。
北斜面は梓川水系である、千曲川を合わせ長野・飯山・長岡・新潟・・・へ。萬代橋のかかる日本海の河口まで、思い出の街をつなぐ水系の境界に鉢盛山はどっしりとそびえている。中央分水嶺の山というだけでなく、私にとっては、信州の真ん中でふるさとをつなぐジャンクションのような山、それがこの山に寄せる想いである。
山頂へ至る登山道は3つついている。安曇村以外の3村各方面からそれぞれあるのだが(鉢盛山は波田町・朝日村・木祖村・安曇村のジャンクションでもある)、どこもカギを役場から借りて林道のゲートを開ける必要があり面倒くさい。木祖ルートと波田ルートは、雨により崩れてしまったともきいた。しかし、冬場ならば、野麦峠スキー場から尾根伝いに登れることを去年知った。そのときはもうゲレンデがクローズしていたので、今年のシーズン中に日帰りで登ろうと計画を立てた。
春休みも始まった3月19日の日曜日に決めた。天気は快晴無風の予報。
前日は雪が降った。3月に入ってからずっと暖かかったので、もう雪は降らないだろうと思っていたところだったので驚いた。いわゆるカミ雪で、大粒の雪が夕方まで激しく降っていた。ちょうどこの日は鉢盛中学校(鉢盛山の裾野にあるため・いまどき珍しい組合立!)にいた。標高が高いため、一帯の畑作地帯は4~5センチほどの積雪で真っ白になった。測候所のある市内の気温はプラス推移だったので、積雪はなかったようである。




雪の降り方を眺めながら、少し仕事をしたり、カモシカスポーツへ行って昔のヤマケイを読んだり、明日の準備をしたりしてのんびり過ごした。

予想通り夜には星も見えて、西から高気圧が張り出してきた。翌朝の安曇野はモヤが出てスキー日和を直感する。いざ出発、今回は久々のソロ、静かに色々と考え事をしながら登ろう、雪崩とかないと良いんだが。。


波田白山 波田から鉢盛山は近すぎてたぶん見えない。三溝の方まで行けば見えるのだろうか。。

美しき朝。。梓川渓谷へ入っていく。

梓川セブンでコーヒー&買い出し、風穴の里で快便
今日はゲレンデ滑るのもいいだろうなぁ、8時半リフトが動き出したころ野麦峠スキー場へ到着

リフト2本だが、1回券×5(1500円)で上部へ

月日 | 時間 | 場所 |
3/19 | 8:30 | 駐車場 |
9:20 | ゲレンデ上部 | |
11:30 | 小鉢盛山 | |
12:45~14:05 | 鉢盛山 | |
15:30 | 小鉢盛山 | |
16:35 | ゲレンデ上部 | |
16:55 | 駐車場 |
ゲレンデ上部より、雲表の乗鞍岳

ちょっと歩いて、樹間から御嶽

乗鞍や、北アも木々の隙間から見える。山頂からの展望に期待高まる。

まだまだ山頂は遠い。まずは小鉢盛山を越えねば

超えました。気温は0℃くらい?風もなく、雪も溶けず、ちょうど良い。ただ雲がでてきたぞ。。

山頂直下の尾根を登ってゆく

振り返ると木曾駒が大きく見えた

箱庭のような場所をぬけると…

山頂でした。波田町の最高地点でもあります。波田は畑ばかりかと思っていたが、半分以上は山林なんですねぇ。。

スキーで来る山ではなかった。。植生も北信越とは異なり、密である。新雪なので尾根上の雪が途切れなかったのでここまで運よく来られた。登ってるときから、こりゃあ滑れないな。。と思っていた。かんじきやスノーシューがないのでその代わりにはいてきたようなもの。でも、スノーシュー全盛の令和の時代に、30年前の昭和の板で、この山の山頂を踏めたのは大きなことだろう。

反射板を越えるとアルプスの展望が

この角度は新鮮である。


望遠で焼岳

常念などの前衛峰が安曇野からの雲を抑えてくれた。

松本市街 奥は根子~四阿山の山並みかな。。

山頂直下の尾根は、広いのでシールをはがして滑走した。

明るい午後の黒い森を、再びシールを貼って歩く

行きに見落としていた小鉢盛山の山頂からは、諏訪湖を望むことができた。

ここからの下りは大変。尾根も痩せていて、木々も多くシール滑走がやっと。急な斜面は板を脱いで担いで下った箇所がいくつもあった。

へとへとになってゲレンデ戻る。すでに営業時間は終わっていて誰もいないゲレンデに座り込む。正面の乗鞍が夕光に輝いていた。
駐車場には、ゲレンデを滑って17時前に戻った。奈川の集落の温泉は閉まっていたので、いつもの室山の温泉へ。しっかり脚をほぐして20時前帰宅。食べて飲んで寝たら、翌朝まで9時間ぐっすりと眠れた。
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