【南下編 長崎~指宿】
ようやく天気も安定する。長崎を出発し、熊本、天草、鹿児島を経由し、大隅半島の先端・佐多岬を目指す。
8日目 雲後晴 長崎~島原港 77.4km 船で熊本港へ
長崎の街で2泊した。ずっと雨がふっていたが、前川清の歌を聴きながら観光して過ごした。路電に揺られ平和資料館へ行ったり、稲佐山を歩いて登ったりした。ドミトリーではイベント商の兄ちゃんと高校生グループと一緒で楽しい時間だった。
そして今朝久々に陽の光を浴びた。ようやく長崎県から脱出できる。キラキラ輝く川面に架かる眼鏡橋を横目に、日見峠の旧道を通って長崎の街を後にした。
諫早付近で有明海側に出て、そこから円形の島原半島を半周した。島原城を見学した後フェリー乗り場近くの温泉に入った。ここから熊本港までフェリーで1時間である。値段も800円弱とありがたい。
17時定刻通り島原港を出発。甲板から普賢岳を見ようと思ったが、なかなか雲がとれない。でもそれも良し。
熊本港の芝生でテントを立てて泊まった。
9日目 晴 熊本港~本渡 107.5km
今日は宇土半島から天草へ入り、上島を走って本渡市街のはずれ・黒崎海岸まで進んだ。終日青天で海の向こうの雲仙普賢岳がずっと見えていた。
熊本の街に用はないので今回はパスした。広大な干拓地を下って宇土半島へ。その先端の三角(みすみ)という街で休憩した。今でこそ小さな漁港だが、かつては栄えていたようで立派な廻船問屋を見学した。
天門橋を渡ると大矢野島だ。横ではバイパスの新橋を建設中でごちゃごちゃしていた。大矢野島と上島の間には「天草松島」と呼ばれる風光明媚な景色がつづく。その上をパールラインで通過した。
天草は大きな島で、それぞれの浦の表情も様々だ。今日は暖かく、休耕地に植えられた菜の花が満開を迎えていた。島原湾に沿って走ったので海も穏やかで春うららの島を満喫した。
10日目 晴 本渡~長島 93.9km
島原湾から朝日が昇る。今日も良い天気。
昨夜は海岸にテントを張って寝た。隣でドイツから来て歩いて九州をまわっているという方もテントを張っていた。福岡からはじめてここまで1か月近くかかっているそうだ。そんな私も10日目である。今日のうちに鹿児島に入りたい、テントを撤収して昨日と同じように海岸線をすすむ。
富岡を過ぎると人の気配が少なくなった。山がせり出し海に落ち込んでいる。R389でその山肌を縫うように進んだ。途中大江教会や崎津教会などのキリシタン施設を見ていたので、牛深の街にはフェリーの時間ギリギリに到着した。
フェリーの着く蔵之元港は、鹿児島県の長島という島にある。今日はここまでにした。今晩も海岸にテントを張ってみたが、マップを見てまわりに食品売り場がないことに気づいた。地元の方が言うには温泉の横に一軒店があるそうだ。ただ、今日はもう閉めているかも。食べる物が無くては困るので、その人の提案で海辺のスナックで何かもらうことにした。遅くまでやっているそうなので、先に温泉に行った。するとこっちの商店も開いていた。朝食用のパンを買ったら、そこのおばあちゃんが大きなおにぎりを作って渡してくれた。
スナックの名前は「喫茶さしき」。そこで牛丼を食べた。サービスで他にもいろいろ作ってもらってもう満腹である。おにぎりは明日食べよう。なんとも心温まる島だ。
11日目 晴 長島~串木野 84.9km
長島と本土は橋で繋がれていた。阿久根の街で福岡以来の3号線に合流。東シナ海に沿って現代の薩摩街道を南下。さすがは南国、この陽気の中で自転車を漕いでいると汗ばんでくる。途中から半袖で走ったらかなり焼けてしまった。
川内川に沿うようにして内陸へ入り、川内市街の先にある峠を超えて今日のゴール串木野に到着。
今晩は長崎以来の宿をとった。朝電話で予約をすると「鍋作って待ってますから~」と言われたので少し気になっていた。宿は串木野インターのあたりにあった。その名は「お~ず」。不思議なおじさんと猫が迎えてくれた。それはそれは面白い宿だった。私の他に客はいなかったので、オーナーと二人で鍋を食べた。実に楽しい時間だった。また鹿児島に行くときには立ち寄りたい。その時までどうかお元気で。
オーナーが描いたという絵に囲まれてその日はぐっすり眠った。
12日目 晴 串木野~桜島 51.0km
朝は昨日の鍋で雑炊を作ってもらった。出発の際、その変な髪形をなんとかしようということで、切ってもらった。玄関に椅子を置いて鶏の声を聴きながらバッサリと。
伊集院を経て、正午鹿児島入城。岩崎谷から城山を登る。その途中、西郷さんの洞穴にも寄った。昨夜のオーナーの正体は画家であり、理容師であり、居酒屋のマスターだった。医者だったというお父さんが描いた西南戦争の絵がこの鹿児島の街にあるそうだ。名前はなんだったか。南洲顕彰館だっけ。小さな古い美術館だった。西郷ブームで城山あたりはすごい人だったが、2,3人くらいしかいない部屋の隅にその絵はあった。
夕方、フェリーで桜島へ。長渕剛のモニュメントがある赤水広場にテントを張った。30分に一度くらい桜島が爆発して噴煙をあげる。フェリー乗り場にはマグマの湯という風呂があり、赤褐色に濁ったお湯に浸かっているとこれまでの疲れなんかもすっとぬけていく気がした。
13日目 晴 桜島~知覧 86.6km
朝、テントを張りっぱなしで桜島を一周した。火山灰に降られた時は怖かったが、ここでしか味わえないサイクリングができたと思う。
フェリーで再び鹿児島へ渡って、平川という町まで南下した。ここから手蓑峠に向かって高度を上げた。途中樹間から錦江湾と桜島がながめられた。峠から先はのどかな里山を下って知覧の街中へ入った。
武家屋敷を見てから特攻平和会館へ寄った。一帯は公園が整備されていて近所の家族連れで賑わっていた。入り口へつづく桜並木もちょうど満開だった。16時の閉館まで2時間あれば見れるだろうと思っていたたが、足らなかった。目を通せない手紙もあった。もう一度行きたい、今度はしっかり学んでから。
知覧には風呂がなかったので川辺の住宅地でテントを張った。銭湯でおじさんが石鹸を貸してくれてありがたかった。
14日目 晴 知覧~指宿 67.6km
朝から茶畑の中を走る。頴娃(えい)の海岸からは開聞岳がきれいに見えた。規模以外は本家・富士山と瓜二つである。ただ、少し走っただけで移動しているのが分かるので、距離感が狂ってくる。あれ、こんなに小さいの?っというように。
今日は指宿まで走るだけ。途中池田湖にも寄ってみたが、14時には着いた。
ライダーハウスに荷物だけ置いて砂蒸し風呂へ。一度出てしまうとそれまでなので、限界まで粘ってやろうと思ったが30分でギブアップ。
ランドリーの横にほっともっとがあったのでそこで夕飯を買った。宿には京都の大学生さんや、台湾からワーホリで来ている方、香港の方がいた。お酒も追加してきて、宿のおじさんも交えて皆で乾杯した。
つづく
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